就業規則は"テンプレ"で作ってはいけない — IT企業の実例で見るリスクと対策
ネット上のテンプレや他社の就業規則をそのまま流用すると、思わぬトラブルの火種になります。社労士エンジニアが、IT企業で実際にあった事例とともにリスクを解説します。
はじめに
「就業規則のテンプレ、ネットに無料で落ちてるんですよね?」
スタートアップの経営者からよく受ける質問です。確かにテンプレは存在します。しかし、そのまま使うのは非常に危険です。本記事では、私が現場で見てきた IT企業のトラブル事例とともに、テンプレ流用のリスクと対策を解説します。
ケース1: フレックスタイム制が無効になっていた
ある SaaS 企業では、テンプレに沿ってフレックスタイム制を導入していました。しかし、就業規則に清算期間と総労働時間が明記されておらず、労基署の調査で「制度自体が無効」と判定。
結果、過去2年分の 時間外労働の再計算と未払い残業代の支払い が発生。総額500万円超の追加コストになりました。
対策
- フレックスタイム制を導入するなら、清算期間(最大3か月)、コアタイム、フレキシブルタイム、総労働時間を就業規則と労使協定の両方に明記する
- 労使協定の届出を労基署に提出する(清算期間が1か月超の場合は必須)
ケース2: 私物PC利用に関する規定がなく、情報漏洩
リモートワーク中心のIT企業でよくあるのが、私物PC・私物スマホの業務利用です。テンプレ就業規則には、ほぼ確実にこの項目はありません。
ある会社では、退職した従業員の私物PCに顧客データが残っており、その後の転売で情報漏洩が発覚。
対策
就業規則または別規程に以下を必ず盛り込みます:
- 業務利用可能な端末の範囲
- 退職時のデータ消去義務
- 違反時の損害賠償条項
ケース3: 副業規定がなく、競業他社で副業されていた
エンジニアの副業は当たり前になりましたが、競業避止と秘密保持の規定がないと、自社の知見が流出します。
私が支援したある企業では、エンジニアが競合する個人開発を業務時間外で続けており、自社のソースコードに似た構造が競合製品で見つかるという事案がありました。
対策
- 副業の届出制(または許可制)を明記
- 競業他社・競合事業への参画禁止
- 秘密保持義務の継続期間(退職後も継続する旨)
なぜテンプレでは足りないのか
就業規則は 「会社の実態に合わせた、世界に1つの規程」 であるべきです。
テンプレが想定しているのは「典型的な日本企業」。リモートワーク、フレックス、副業、ストックオプション、外国人雇用――現代のIT企業の実態は、テンプレが想定する世界の外側にあります。
弊事務所のアプローチ
弊事務所では、就業規則作成時に以下のステップで進めます:
- ヒアリング: 業態、働き方、リスクの棚卸し(2〜3時間 × 2回)
- ドラフト作成: 本則・賃金規程・育児介護規程・ハラスメント規程など
- レビュー会: 経営陣との読み合わせと修正
- 届出代行: 労基署への届出と従業員への周知支援
料金: 一式 20万円。実際のリスク発生時のコスト(前述の500万円のような)と比較すれば、間違いなく価値のある投資です。
ご相談はお気軽にどうぞ。